ジイの独り言

2016年12月22日up

  1. ホーム
  2. ジイの独り言
  3. >
  4. サンタになりたい
じいのひとりごと

サンタになりたい

子どもがお世話になっていた保育園から 「サンタになって欲しい」と頼まれた。しかし あのでっぷりした体系とはほど遠く ヤセッポッチの私である。色黒で あの優しい笑顔もない。あるのは 白髪交じりの無精ひげだけだった。子どもの頃から 偽物サンタをどうにも好きになれず むしろ気持ち悪いとさえ思っていた私。「子どもをだます役は 引き受けられません。」ストレートに一旦はお断りしたが しつこく食い下がられて引き受けることにした。条件は 「赤い衣装をお借りし白いひげを顔隠しに使うがお腹にクッションを入れて体型をカモフラージュすることはしない」そして「私は声を出しません」だった。

季節ともなればあちこちで 絵本にあるままの偽物サンタに出会っている子どもたち それに今時の子どもたちのこと どうせしらけた顔で もしかしたら罵声を浴びせてくるかもしれないと覚悟していた。

マントルピースの作りものに隠れ 出番を待ちながら「何か面白いことが出来ないか」と考えた末 「煙突から入るんだから お尻から登場してやろう」と決めた。後は「どうにでもなれ」だった。


先ずお尻をしっかり見せ もぞもぞと動くと子どもたちの狂喜な歓声と笑いが起きた。 私は ゆっくりとその場に後ろ向きのまま立ち上がり 歓喜がすこし納まるのを待った。 ザワザワしている子どもたちの方に ゆっくりと向きを変えた。大変などよめきを隅から隅までゆっくりと見渡した。立ち上がって手をたたく子 何度も万歳をして椅子を蹴飛ばす子 奇声が止まらない子 子どもたちの興奮に私は驚いたジェスチャーを見せ 手を広げて会釈をし 大きな白い袋を引きずり 子どもたちの方にゆっくりと歩き近づいた。

「サンタさんが みんなの元気にビックリしていますよ〜!」「さあ〜 拍手で迎えましょう〜 今日は サンタさんが みなさんにプレゼントを持ってきて下さいました〜!」保育園の先生が 満面の笑みで話しかける。拍手の後 シ〜〜ンと一瞬静まり返った。「今だ!」私は 端の子どもから順に 白い袋からプレゼントを手渡し 頭に手を置いた。「いい子だね 可愛いよ」言葉にはしなかった。

顔を赤らめて「ありがとう」とニッコリの女の子。次の男の子は 小さなプレゼントの箱を手に神妙な顔でじっと私の目を見た。次の子も そして次の子も・・・。一人ひとり 頭に手を置く私を じっと見返した。何故か みんな静かになった。私は その部屋の静かさに緊張した。ジワ〜と出てくる汗を感じていた。子どもの輝く目に負けじと でも一生懸命優しい目で応えながら 偽物サンタを恥じた。その場から逃げだしたい気持ちをグッとこらえた。


「じゃあね〜〜 バイバイ〜〜 ホーホー!」子どもたちに背を向けた瞬間 声が出てしまった。
みんなに笑いが戻った。その笑い声 あれこれ話す子どもたちの声を背に 私は倒れそうなくらいに疲れていた。
「あんな子どもたち 初めて見ました。」
「大成功! ありがとうございました。」
「いえいえ すみません 時間がかかってしまって・・・」
「いえ〜 素敵でした。」

「子どもたちにとってのサンタは ただプレゼントを配るお爺さんじゃない」と確信した瞬間だった。
「本当のサンタになりたい」と 真剣にそう思った。

著者プロフィール

すだジイ

独り言の主すだジイ

多彩な時代を生きてきた人生経験豊かなジイ。 そんなジイにだから見える景色がある。 忙しく日々を過ごす中で見落としがちな情景。 そこにはたくさんのストーリーがつまっている。 このコラムで綴るのは「街のスケッチ」。 それを通じて何かを感じていただければ幸いです。
contact facebook イベント募集中