試行咲互の日々

2016年10月11日up

  1. ホーム
  2. 試行咲互の日々
  3. >
  4. 臨月の決意
試行咲互の日々 試行咲互の日々

臨月の決意

長男、1歳11カ月。2歳の誕生日が先か、お兄ちゃんになるのが先か。最近は私の大きなおなかを愛おしそうに撫でながら「めもちゃん。」と胎児名を呼びかけたり「おおきくなったねー。」と話しかけたりしている。

 
妊娠後期に腰痛持ちになってしまってからというもの、そんな健気な息子をじゅうぶんに抱っこしてあげられなくなっていた。ひどい時は、一歩のために脚を出すたび痛みがひびく。
息子はわたしの口癖「ママ、こしいたいから。」を真似するようになった。裏腹に、やっぱり抱っこはしてほしい、甘えたい。
「抱っこはできないの。」と言うと「おんぶ!」と泣いてすがる。けれどおんぶも、できなかった。
私だって、できることならその気持ちを満たしてやりたい。
とは言え、痛みがきつい時は受け止める余裕がなく、しつこく泣かれるとどうしようもなく苛立ってしまう。
葛藤の日々が続いた。

 
息子を散歩に連れて行くことはもちろん、買い物ですら一人ではままならない無力感。お産までこのままか…と一時は落ち込みもしたが、身体の使い方に注意をしながら助産師さんや整体師さんに教わった体操を続け、少しでも不自然さを感じたら、ツボの本を参考にお灸をすえた。
その甲斐あって、臨月に入った頃には随分と楽になり、階段もトントントン、それはもう軽々と昇り降りできるようになったのだ。
あいかわらず無理は禁物。
でも、いじいじ落ち込み虫やメソメソ弱気虫は退散してくれた。
息子が私を見上げ「ママ、だっこ。」と両手を広げてきてくれた時に、「はあい。」と抱き上げ、ひしっと抱き合う。
そんな愛おしい時を味わえるタイムリミットが刻一刻と近づいていると思うと、陣痛が来るその瞬間まで、とにかく目の前の息子には「大好きだよ。愛しているよ。」…そう伝え続けたい、と思うようになった。
言葉、表情、スキンシップ、どんな方法でもいい、私にできるありとあらゆる表現で。
ー「ねえ、ママ。」と呼ばれた時に、すぐに「なあに。」と言いたかったから、仕事をやめたの。ー
と言った先輩がいた。

 

 

赤ちゃん時代を終える頃から、育児は第二ステージだ。
自我が芽生え、意思疎通ができるという新たな喜びとともに、命を守るお世話中心だったそれまでとは違う新たなストレスを親は抱くようになる。
家では呆れるほど絵本を読まされ家事は進まず、買い物に行けば何でも触りたがり、歩いてほしい時には歩かない。思い通りにならないとどうしようもないほど泣きわめく姿には、全身から吐き出すような大きなため息をついてしまう。
今思えば、女性特有のホルモンバランスの変化のせいもあっただろう。私自身「こんなに苛立ちが止まらないなんて一体どうしたんだろう?」と混乱する時期もあった。
でもそんな時ふと先輩の言葉を思い出しては、穏やかさを取り戻すことができた。
仕事に戻らず、息子と一緒に暮らすことを選んでいるのは自分。

 

それは何故、何のため?
…自問すると、
埋もれかけていたたったひとつの答えが、やさしく浮き上がってくるのを感じる。
それは私にとって、本当に本当にたいせつな宝物。まるでおひさまみたいに、暖かくて強くて、時に見えなくなるけどなくてはならないもの。
先輩の言葉と、自分の中の答えと。
双方をお守りに、これからもなんとか頑張れそうな気がするのだ。ひたすら「育児する」今を味わい尽くす天才になろうじゃないか。
2歳差育児は、もう間もなくやってくる。
(つづく)

著者プロフィール

藤樫怜子

藤樫 怜子

麻生区で年2回開催のVege&Fork Marketスタッフ。福祉施設職員、幼稚園教諭を経て、植物性スイーツのパティスリーで製造販売、教室運営に携わる。その後『かぼちゃのおうち』の屋号でオーダーメイドのアニバーサリーケーキ受注を開始。独自の感性で世界にひとつの「想い」をデザインする楽しさに熱中する。また、野菜料理カフェでの接客を通して身体と心と食のつながりを学ぶ。 3ヶ月間カリフォルニアの日本語幼稚園で保育補助をする機会に恵まれ、保育の楽しさを再確認して帰国。スイーツの世界から完全に退く。1年後に長男、2年後に次男を出産。 複雑な感情に揺れながら子どもと向き合う日々。母としてたくましく愛情深く育っていく(であろう)過程を綴ります。 子も親もお互いに、きれいな花を咲かせよう。
contact facebook イベント募集中